大判例

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東京高等裁判所 昭和32年(う)1027号 判決

被告人 高橋義春

〔抄 録〕

N弁護人の控訴趣意第一点について。

昭和三十一年九月三日附起訴状中の公訴事実第一(但し昭和三十二年四月八日訴因を変更したもの)並びに昭和三十一年十月三日附追起訴状中の公訴事実第四の各記載はいずれも論旨摘録の如くであり、なるほど右の各公訴事実は夫々その日時につき昭和三十一年五月中旬頃四回に亘り、あるいは同年五月下旬頃二回に亘りとの記載があるにとどまり各個の犯行の日時につき詳細の摘示を欠いていることは所論の如くであるけれども、右の各所為はいずれも業務上横領に係り、被害者はいずれも生協写真株式会社であり、これらの各所為はいずれも被告人の右会社の被用人としての業務に関するものであり、犯罪の態様はいずれも右会社のため業務上保管に係るセミミノルタP型写真機をほしいままに被告人の用途に供するため昭和三十一年九月三日附起訴状中の公訴事実第一関係の十台は光進堂写真機店渡辺信治方において同人に対し、また同年十月三日附起訴状中の公訴事実第四関係の二台は峰光堂写真機店木ノ切恒雄方において同人に対し、夫々売却して横領したものであり、しかも各犯行は極めて近接した日時に敢行されたものであることは右各公訴事実の記載自体に徴し明白であるから右の各所為は夫々単一の意思の発動に基いて敢行されたものとしてこれらの各行為は夫々包括して観察し一罪と認むべきであり検察官もまたその趣旨において公訴を提起したものと認むべきであるから本件公訴事実の如き記載をもつてしても優に訴因は特定せられているものというべく、従つて原審には所論の如く訴因の特定しない公訴を不法に受理しこれを審判したという違法あるいは審理不尽の違法はない。更に論旨は前記昭和三十一年九月三日附起訴状中の公訴事実第一につき昭和三十二年四月八日その横領に係る写真機の台数を十台とその売却金額を四万円と訴因を変更したことは違法であると主張するけれども右は一罪の一部につき計数の誤を証拠と対照して正確たらしめたに過ぎず固より公訴事実の同一性を害するものではなく、且つ原審の公判調書の記載によれば被告人は本件公訴事実を全面的に自白しており各犯行の日時、横領した写真機の台数及びその売却代金等についてその詳細を記載した渡辺信治、木ノ切恒雄の各作成に係る買取始末書についてもなんらの異議をも留めることなく直ちにこれらを証拠とすることに同意しておるのみならず前記昭和三十二年四月八日の原審第十回公判廷においても検察官より前記の如く訴因変更の請求を受けるや直ちにこれに同意しておるのであつてこれらの経緯からみて右の訴因の変更が被告人に対して実質的に防禦を困難ならしめたものとは到底認められないからこの点に関する所論もまた採用できない。

(中村光 久永 鈴木)

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